新型コロナウイルスの影響により、感染リスク軽減のためにマスクの需要が高まり日本でも全国的に品薄が続いている。
その影響は消毒液や除菌グッズにまで及び、店頭ではいまだに品切れ状態となっているわけだが、ついにテッシュやトイレットペーまでもが買い占めにより品切れ状態になっている。
人は学習する動物といわれているが、1973年に起こったオイルショックでも生活必需品が品薄になるとされトイレットペーパー目当てに大挙して人が押し寄せた。
これは象徴的な出来事として歴史の教科書に残るほどになったわけだが、まさにこれは令和のオイルパニック「コロナパニック」の歴史的な一場面に遭遇しているのかもしれない。
トイレットペーパー買い占め騒動がなぜ起こったのか
そもそもオイルパニックの象徴であるトイレットペーパーの買い占めはなぜ起こったのか?
当時は中東問題により原油価格の高騰から、政府より紙の節約が呼びかけられた。
そのことが原因により、紙がなくなるのではないか?と噂され、一部の店舗がそれをあおるような販売を行ったことによりトイレットペーパー完売。
それがマスメディアを通して報じられると、パニックが連鎖的に広がり全国的に知れ渡ることとなった。
その結果、全国的にトイレットペーパーを求める客であふれかえり、街中からトイレットペーパーが姿を消した。
それはしばらく続き、行列が後を絶たず店頭に並んでは即完売を繰り返していた。
当時の日本はすでに紙生産業界は安定しており、まったくもって影響はないはずだったが、当初は店舗に提供される量がかわらなかったため、想定外の需要により供給が追い付かず結果的に増産をしたほどだったという。
政府の自粛の呼びかけも意味をなさず、買い占めは続き、値上げなども横行した。
まさにこれは集団心理が引き起こした人災みたいなものであり、落ち着いて静観すれば何も問題は起きなかった。
集団心理の恐ろしさ
今回のことの発端は、2月27日に九州で始まったトイレットペーパーの買い占め騒動だという。
トイレットペーパーの原料はマスクと同じだからトイレットペーパーもなくなる
こういった内容がSNS上(買い占めの原因となるデマを流した当人は大炎上中※それもデマ)でつぶやかれ、爆発的に広まり翌日にはトイレットペーパーを求める人があふれ全国的にトイレットペーパーが品切れとなった。
ネットが普及した現代では、その拡散力はオイルパニックの比ではない。
情報に踊らされた人々がその情報を信じこういった行動に走ってしまった。
人は周りの行動に影響されやすいので、周囲の人達がトイレットペーパーを買いあさっているのを見ると不安にかられる。
この状況が数週間、もしかすると数か月続くんじゃないかと思うと居ても立っても居られない。
その結果が今回の騒動を引き起こした。
まさに集団心理の恐ろしさというやつだ。
令和版オイルパニック「コロナパニック」の流れはこうだ。
最悪こうなるかも?
step
1不安の拡散
SNS上でトイレットペーパーが無くなるとつぶやかれる。
それがリツーイトされいっきに拡散、マスメディアが取り上げることでSNS非ユーザーにも拡散される。
ことの真相よりも「無くなる」という一面だけが記憶にすり込まれる。
step
2買い占めが始まる
不安にかられた人々が思考停止してトイレットベーパーの買い占め、買い溜めを始める。
その結果店頭からトイレットペーパーが姿を消す。
step
3関係業界が火消しを始める
製紙業界各所が生産に問題はない・在庫は潤沢であるとし、買い占めが無意味であることを説明する。
step
4パニックになる
トイレットペーパーが無いことから、消費者の不安が高まりより一層需要が高まる。
その結果、店舗に並んだトイレットペーパーが即完売となり、本当に必要としている人が手に入らなくなる。
この騒ぎに呆れて静観していた人や楽観視していた人たちまで実害が及び始めて争奪戦に加わる。
そして特需状態となり需要と供給のバランスが崩壊し、一時的に品切れ状態になってしまう。
転売や値上げなどで価格も崩壊し、完全にパニック状態となる。
step
5そして後悔する
材料や生産能力に問題がないため、一時的に品薄に見えるかもしれないがすぐに供給が追い付く。
何事もなかったかのように普通に在庫が並ぶ。
そして家には定価やそれ以上で購入した大量のトイレットペーパーのストックが並び、トイレットペーパーを求めて奔走していた無駄な時間に後悔する。
現在はステップ3まで来ているので、ここで冷静にならないと本当にパニックになる可能性は否定できない。
それこそ全国民が買い溜めに走りでもしなければなくなることは無いという。
むしろ海外からの観光客が減っている今、逆にトイレットペーパーの販売が落ち込むかもしれないという心配がされていたほどである。
どうしてトイレットペーパーが無くなるとデマが流れたのか?
そもそもなぜトイレットペーパーが無くなるというデマが流れるきっかけとなったのか?
それはマスク生産に原料である紙が大量に使われるが、同じ原料を使うティッシュやトイレットペーパーもいづれ品切れになるというデマが流れたのが理由だ。
そもそもマスクの原料とトイレットペーパーの原料は違う
マスクの原料に使用されるのは「ポリエステル繊維」だ。
繊維を科学的に結合させることで布状にした不織布を使用してつくれられるのがマスク。
生産工程の一部を中国に頼っているところがあるため、深刻な影響を受ける。
そしてトイレットペーパーは「古紙」や「パルプ材」を原料とする。
そして原料であるパルプ材は中国からの輸入はせいぜい2%程度と言われている。
チップに至ってはほぼゼロと言ってもいいくらいだ。
出典:日本製紙
しかもトイレットぺ―パーは日本国内で生産されている。
そのうち4割が静岡県で製造されいるため、震災などでも起きない限りは深刻な供給不足が発生することはないという。
それでも経済産業省の要請により、日本家庭紙工業会が策定した「トイレットペーパー供給継続計画」により非常時には増産体制に入ることになっている。
非常時には1か月ほどの供給不足が発生するかもしれないと予想されているが、今回に関してはそれには当てはまらないため全国的に通常通りに生産されている。
つまりはトイレットペーパーが品切れになる理由が見当たらないから完全にデマであるといえる。
トイレットぺ―パーの原料はマスクと違うし国内生産品!
最後に
とある人物の無知によるSNSでのデマつぶやきに始まった、トイレットペーパーやテッシュが店頭から姿を消した騒動。
発信元が特定されても、一度流れたデマに尾ひれがついてなかなかすぐには終息には至らない。
思考停止によりデマを信じてしまう層が一定以上いるのは仕方の無いこと。
それを逆手にとって転売などで儲けようという輩も後を絶たない、不安にかられた人々が大挙して押し寄せ、そうしたことが原因で店頭完売状態が未だに続いている。
ティッシュやトイレットペーパーは有事に備えて1か月分ほど備蓄しておくことが推奨されている。
無駄な買い溜めをせず必要なだけ購入するように心がければ、すぐにでも店頭在庫は回復するはずだ。
トイレットペーパーに限った事ではなく、何だって買い占めに走れば一時的に同様の状況に陥る。
無くなる・無くなったから買いにいくのではなく、普段から備蓄が可能なものは最低限の量を確保しておくことでこういった事態に陥った時も慌てることなく冷静でいられる。
集団心理で慌てるのはわかるが、いったん落ち着いてデマかどうかを見極める目を養おう。